UA-82071804-5 原発性リンパ浮腫の健康保険療養費のこと|wagamama-lymphie
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わがままリンフィ day & lymphedema

​​リンパ浮腫患者の日常を気まぐれに書いています

原発性リンパ浮腫の弾性着衣、健康保険療養費を申請するのは患者に与えられた権利である

以前から、原発性リンパ浮腫の健康保険療養費について書こうと思いながら延び延びになっていました。

この話題について良からぬ発言を目にしてしまったがために躊躇したのが原因です。

でも、やっぱり患者側が声を上げんとアカン、と思うので書きます。

癌の後遺症として発症したリンパ浮腫にも関わることも書いてます。

かなり真面目です。毒も混じってます。医療者側の方には耳の痛いことがいっぱいです。長いです。

でも読んでみてほしいです。

まず、こちらを読んでみてください。

 

<抜 粋 1. >

 平成27年(健)第220号

                                 平成27年11月27日採決

再審査請求の経過

1. …医師の指示で、両下肢原発性リンパ浮腫の治療のため装着した弾性ストッキング2本分の代金に対し、家族療養費の支給申請した。

2. …平成21年3月20日保発第0321001号による対象疾患は悪性腫瘍の術後リンパ浮腫と明記されている。今回申請の傷病は原発性リンパ浮腫であり、不支給と決定した。

当審査会の判断

2. …弾性着衣等にかかる療養費の支給対象については「リンパ節郭清術を伴う悪性腫瘍の術後に発生する四肢のリンパ浮腫」とされている。

3. …健保法第110条第7項及び第87条第1項の規定の趣旨からすれば、家族療養費の支給について、これをどの範囲で行うかは、保険者の合理的な裁量に委ねられているものということができる。

4. …一時性(原発性)リンパ浮腫と、二次性(続発性)リンパ浮腫の治療法は共通であり、…リンパ系の循環機能障害でリンパ液が患肢に貯留して発症する浮腫であるという、その発生機序において同一のものと考えられ、…当審査会としても、術後のリンパ浮腫と原発性のそれとでは治療内容に相違がないことが認められていることからすると、本件傷病を弾性着衣等に係る療養費の支給対象から除外することは、療養費支給の趣旨・目的に照らして必ずしも合理的なものであるとはいえないと判断する。

…医師作成の「意見書」によれば、弾性包帯を使用した圧迫療法を行い、その後弾性ストッキングの着用を指導、…治療方針は続発性と全く同じように圧迫療法を行うことが必須で、圧迫療法を行わずにリンパ浮腫の治療を行うことは不可能としている。

…以上みてきたように、原発性リンパ浮腫は、リンパ節郭清を伴う悪性腫瘍術後のリンパ浮腫とは別傷病ではあるが、それらの発生機序、治療方針は共通のものであり、…本件家族療養費の支給を認めるべきものと判断される…

 

どう感じられましたか?

これは、厚生労働省内に設置されている社会保険審査会での裁決文の抜粋です(全文はこちらから。

開かないときは「原発性リンパ浮腫+再審査請求」で検索してみてください)。裁判でいえば、判決文とでもいうのでしょうか。

この裁決文は、再審査請求をした当事者に対しての決定文です。不支給決定を受けた請求者に対して、給付しなさいよ、という決定です。

でもこれは、全ての原発性リンパ浮腫患者に当てはまることなんです。今後、原発性リンパ浮腫の療養費支給決定の口火となっていくことは間違いありません。

原発性リンパ浮腫の皆さん、堂々と給付申請してください!

時々目にする「原発性弾性ストッキングは健康保険の給付対象外」という文字列。

確かにね、現行の給付規則でいうと対象外です。

「対象外だから仕方ないよね」と、諦める原発性リンパ浮腫の患者さんたち。

だからってそれで諦めていいの?

nokiaが思うに、医療者側、治療者側、弾性着衣メーカー側が「対象外だから」と一刀両断に切り捨ててしまっていることに問題があるんじゃないかと思います。

確かに、原則は原則です。治療者側としては原則で対応するのが本筋でしょう。でも穴だらけの原則をそのまま鵜呑みにしてしまっていいの? 保険者から目をつけられたくないから、という自分かわいさの言い分じゃないの? 

保険者側にいたnokiaからひとこと言いたい。

給付対象外のものを申請されたって目をつけませんから!

そのことで保険医療機関の取り消しなんてできせんから!

目をつける理由もないし、保険医療機関の取り消しなんでできるわけもない。その理由は後述します。

現在の弾性着衣・弾性包帯に対する健康保険の給付基準は「弾性着衣・弾性包帯、療養費の支給基準~保医発第0321001号 平成20年3月21日」によります。

通知文の中にもありますが、弾性着衣・弾性包帯の給付対象者は「リンパ節郭清術をともなう悪性腫瘍の術後に発生するリンパ浮腫」とあります。給付の対象者が限定されているんです。同じ癌治療でも「リンパ節郭清を伴う」とまで限定されているんです。リンパ節郭清がなくても後の放射線治療でリンパ節が損傷することがあるにもかかわらず。

リンパ浮腫の発症原因の44%が子宮癌など婦人科系癌で、乳癌その他の癌を合わせると約70%が癌の後遺症として発症しています。言い換えれば、約30%の方が癌以外の原因で発症しているということです。30%のうち10%が原発性、8%が外傷性で残りが原因不明となっています(2016年統計)。つまり、約30%のリンパ浮腫患者が健康保険の給付対象から弾かれているということになるのです。

この数字を少ないと思いますか?それとも多いと思いますか? 数字の感じ方は人それぞれなのですが、nokiaとしてはこの数字、多いと思います。実に30%の方々が給付対象外となっているんです。

弾性着衣についての療養費給付が認められたのは平成20年のことです。今から10年前。給付対象にするか否かの協議はおそらく前年かそれ以前に行われていると思われますので、参考資料としては10年以上前のものを使っているはず。その頃の資料に上記のような発症原因の割合が示されていたかどうかは疑問が残るところです。

中央省庁の中で協議されたこの案件、おそらく担当者は、原発性や原因不明により発症するリンパ浮腫がよくわからずにこの通知文「弾性着衣・弾性包帯、療養費の支給基準~保医発第0321001号 平成20年3月21日」を出したものと思われます。nokiaも人のことは言えません。この通知が出された時、ちょうど健康保険の給付決定担当係にいましが、nokiaも原発性のリンパ浮腫があることを知らなかったんです。その後数年、給付決定係にいましたが原発性の方の給付申請を見ることはありませんでした。おそらく、装着意見書を書いてもらえなかったのでしょうね。原発性リンパ浮腫のことを知ったのはリンパ浮腫ブログをはじめてからのことです。

原発性リンパ浮腫患者さんの健康保険療養費請求に医療者側は難色を示す、というのを患者さんのブログなどで見かけます。

患者さんがダメ元で申請しようとしても、医師が装着指示書を書いてくれない、という内容です。

原則から外れたことをしようとすると、装着指示書に特記が必要になります。一筆加えるのがめんどくさいというはわかります。保険者から、なぜこの指示書を書いたのか、という照会に答えなきゃいけない、これも面倒だというのもわかる。

でも、リンパ浮腫の治療法は原発性も続発性も同じだし、同じだから弾性着衣の着用指示を出すんでしょ。医師は区別をつけていることに疑問を持たれないのでしょうか。

この裁決文の中に、

 

< 抜 粋 2. >

当審査会の判断 

4.… 平成20年…当審査会からの照会に対し、厚生労働省保険局医療課が…「その疾患概念や診断基準等が確立されておらず、弾性ストッキングの有効性についても科学的根拠が示されていないことから、現時点では、弾性ストッキングを療養費の支給対象とすることはできない。」とする見解…

 

というくだりがありました。この文章を見ると、平成20年当時は療養費の支給基準を作った、厚生労働省医療課では原発性リンパ浮腫に対する認識が曖昧であったことがわかります。お役所の人間ですからねぇ。事務官に医学的知識を持て、というのは酷な話です。

< 抜粋1. >の中にもありますが、健康保険法第87条第1項(家族療養費においては第110条第7項)に、「保険者がやむを得ないものと認めるときは、…療養費を支給することができる」とあります。

 

健康保険法(療養費)

第87条 保険者は、療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給(以下この項において「療養の給付等」という。)を行うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合において、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる。

 

ここには、それぞれの保険者(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合など)がやむを得ないと認めるときは療養費を支給することができる、と書かれています。給付金の支給決定は各保険者の裁量に任せる、ということなのです。

基本に沿うのはもちろんですが、基本から少し離れたところ、例えば、発症原因を問わず給付決定することなどは、保険者がやむを得ないと認める要件の一つとなり得る、ということです。

つまり、「正当性があると認められるなら給付していいよ」ということです。

申請先によって、原発性リンパ浮腫の療養費が支給されたりされなかったり、というのはこの条文を拡大解釈できるかどうかの寛容さに関わってくる部分もあると思われます。

健康保険法には、規定にない事例を申請してはならないとは一言も書かれていません。むしろ第87条、第110条第7項では、保険者の裁量によって給付できることもあるよ、と寛容な態度を示しているのです。

原発性リンパ浮腫しかり、リンパ節郭清を伴わない発症しかり、エアボウェーブしかり。。。

だから、安心して申請してください。

申請することを違法だとか犯罪だとかいう人がいますけど、その認識が誤ってますから。

そして、もしも不支給という納得できない結果になったなら、不服申し立てなり審査請求なりしてください。被保険者に与えられた当然の権利です。

 

健康保険法(審査請求及び再審査請求)

第189条 被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は、社会保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服がある者は、社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる。

 

もちろん、一定のルールは必要だし、闇雲に給付決定してたら予算が足りなくなります。

特に、独立採算で運営していかなければいけない健康保険組合などは給付基準が厳しくなる傾向にあるかもしれませんので、ここから先は個々の戦いになってしまいますけど。

また、この裁決文の中に、

 

<抜 粋 3. >

…厚生労働省難治性疾患克服……(各界研究・理事長の6名の)医師が厚生労働大臣宛に提言した平成24年8月2日付「原発性リンパ浮腫に関する政策への共同宣言」と題する書面によれば、現在保険適用外で診療されている原発性リンパ浮腫の実態に鑑み、原発性リンパ浮腫診断治療指針に推奨された医療体系について保険収容し、患者負担の軽減を図り、原発性リンパ浮腫を完治させるため、治療手段の開発を基礎研究から臨床研究に至るまで国として支援し、強力に推し進めることなどを提唱しているところである。

 

という文章もありました。nokiaの憶測ですが、この働きかけがあったから、原発性リンパ浮腫は小児慢性特定疾病に認定されることになったのかな、と思います。

医療費はもちろんですが、弾性着衣についても補助をしてもらえるようになってくれば、続発性リンパ浮腫患者の給付基準も変わってくるかもしれません。どちらが有利かということではなく、双方の給付基準が向上すれば、双方が相まってより充実した給付を受けられる未来が来るのではないかと思います。

たくさんの毒が混じってしまいました。

決して医療者の方々へ文句を言っているわけでないのをご理解いただければ、と思います。医療者と患者が協力しなければ充実した給付金制度を作り上げることは難しいです。

患者が安心して治療に専念できる環境作りにお力を貸していただけると嬉しいです。

療養費の支給申請、不服申し立てについてブログに書いています。よろしければ参考にしてください。

長々と読んでいただいてありがとうございました。

もっともっと書きたいことがありますが今日はこれくらいで。

nokia

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